慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
西洋史特殊Ⅱ
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第2類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EA100202

講義要綱

〔授業の到達目標及びテーマ〕
 本科目は、「近世ヨーロッパの宗教・政治・社会」について学習することをテーマとするが、以下の5つの点をその到達目標として掲げたい。
①宗教思想の内実よりも、むしろそれが16世紀から18世紀のヨーロッパの歴史の中で政治や社会に与えた影響や教会と国家との間の相互関係を中心に考察し、その歴史的経緯を理解する。
②近世におけるキリスト教の歴史や思想を知ることによって、西洋に対する異文化理解のための基礎的な認識や視野を広げる。
③西欧文化の宗教的根底に触れることによって、教養を深め、国際的な感覚を身に付け、異文化理解や異文化コミュニケーションのための基礎的な認識や視野を広げる。
④人文・社会科学的な思考に接することによって、論理性や客観性の追求のための方法論を学ぶ。
⑤外国の歴史を学ぶことによって、現代の日本社会やその過去の歴史と文化を相対化し、別の視角から再検討する精神思考を育成し、自分という存在を問い直す契機を提供する。

〔授業の概要〕
 本科目では、16世紀から18世紀のヨーロッパにおける宗教と政治や社会の関係について考察する。この時代には、中世的な封建社会が衰退し、徐々に主権国家が形成され、普遍的な権威や権力を持っていた教皇と皇帝の地位は大幅に低下し、中世ヨーロッパに統一的であった普遍的支配秩序が動揺した。近世ヨーロッパでは、旧来の身分制的な社会秩序は存続してはいたものの、ルネサンス、宗教改革、宗教戦争、絶対主義を経て、各地で教会と政治・社会との関係は、修道院の廃止、聖職者の特権の撤廃、教会裁判権の縮小、社会福祉施設の変容などに見られるように、著しく変化したのである。また宗教改革によって宗派分裂が決定的になると、他宗派や他宗教に対する寛容と不寛容の問題が深刻化した。このように現代ヨーロッパ社会が抱える諸問題の背景や起源を理解する上でも、近世ヨーロッパ史を学ぶ意義は非常に大きい。

〔授業計画〕
 指定教科書の構成は次の通りである。

 はじめに 
 第1章 ルネサンスとその影響
 第2章 宗教改革と近代社会の形成
 第3章 キリスト教の戦争観と近世における宗教戦争
 第4章 絶対主義の時代と主権国家の形成
 第5章 ピューリタン革命と絶対主義の終焉
 おわりに

テキストの読み方

まずテキストを複数回精読してください。さらに、それを通して知的刺激を受け、自由意志で自己の関心を広げ、それと関連した文献を調べて、より多くの書籍を講読してほしい。その際に難解だと感じた箇所については、近世ヨーロッパ史に関する事典や辞書などを用いて、可能な限り理解するための努力を行ってください。

履修上の注意

高等学校の世界史レベルの知識を身につけた上で、「歴史(西洋史)」を既に履修していることが望ましい。近世ヨーロッパ史全般に関する概説書・研究書を積極的に講読してください。

関連科目

「歴史(西洋史)」「史学概論」「西洋史概説Ⅰ」「西洋史概説Ⅱ」「西洋史特殊Ⅲ」

成績評価方法

レポート課題と科目試験(単位修得試験)の合格により単位修得となる。
・レポートを評価する基準としては、①単にテキストと参考文献を書き写すのではなく、それを的確に理解し、自分の言葉でわかりやすく表現しているかどうか、②様々な歴史的事象を論理的に整理し、段落分けを行っているかどうか、③どのような文献を用いて文章を作成したのかについてわかるように、参照した文献とその頁数を注の中で適切に明記しているかどうか、④他人の説の引用と自分の考えの区別が明瞭にわかるように気をつけて執筆しているかどうか、などを考慮する。
・科目試験の答案の判定基準としては、歴史の流れを正しく把握し、テキストの内容を的確に理解しているかどうかを、最も重視する。

参考文献

・二宮宏之『フランスアンシアン・レジーム論─社会的結合・権力秩序・叛乱─』(岩波書店、2007年)。
・小倉欣一編『近世ヨーロッパの東と西─共和政の理念と現実─』(山川出版社、2004年)。
・甚野尚志・踊共二編著『中近世ヨーロッパの宗教と政治─キリスト教世界の統一性と多元性─』(ミネルヴァ書房、2014年)。
・ピーター・H.ウィルスン著/山本文彦訳『神聖ローマ帝国1495-1806』(岩波書店、2005年)。
・阪口修平・丸畠宏太編著『近代ヨーロッパの探究⑫─軍隊─』(ミネルヴァ書房、2009年)。
・R.W.スクリブナー、C.スコット・ディクスン共著/森田安一訳『ドイツ宗教改革』(岩波書店、2009年)。
・野々瀬浩司『宗教改革と農奴制─スイスと西南ドイツの人格的支配─』(慶応義塾大学出版会、2013年)。
・ベルント・メラー著/森田安一他訳『帝国都市と宗教改革』(教文館、1990年)。
・ペーター・ブリックレ著/田中真造・増本浩子訳『ドイツの宗教改革』(教文館、1991年)。

レポート作成上の注意

レポート作成の際には、単にテキストと参考文献を書き写すのではなく、自分の言葉でわかりやすく表現してください。様々な歴史的事象を論理的に整理し、段落分けを行ってください。また、どのような文献を用いて文章を作成したのかについてわかるように、参照した文献とその頁数を注の中で明記してください。他人の説の引用と自分の考えの区別が明瞭にわかるように気をつけて、執筆してください。