慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
新・アメリカ文学研究Ⅱ
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第3類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EA006302

講義要綱

〔授業の到達目標及びテーマ〕

米国の文化史を広く深く理解した上で、アメリカ文学を学術的に論じるために必要なアカデミック・スキルを身につけることを目指す。

〔授業の概要〕

本科目では、近年のアメリカ研究の蓄積に裏付けられた指定教科書で米国の文化史を通史的に学びつつ、文学テクストをその内容、形式、意義、影響などに注目しながらどのように論じたらよいのかを習得する。すなわち、登場人物の性格描写や物語設定、表現上の特質など、原文に即してテクスト中の具体的な証拠を集め(=テクストの精読)、それらを様々な事象と関連づけ(コンテクストの補充、歴史化)、アカデミックな論文を書くために必要な技術を体得する。

〔授業計画〕

指定教科書を読み進め、アメリカ文化研究におけるアプローチの多様性を理解した上で、レポートでは文学テクストを先行研究を踏まえた上で論じてもらう。指定教科書の構成は以下の通りである。

第一部 近代国家以前 Early America

1 アメリカとヨーロッパの邂逅
2 アメリカの魔女たち
3 18世紀イギリス植民地と独立戦争

第二部 南北戦争以前 Antebellum America

4 アメリカ固有の文化の誕生
5 アメリカン・ルネサンス――エマソンとホイットマン
6 ペーパー・ムーン
7 南北戦争とリンカン大統領
8 見えないものをみる方法――
 (疑似)科学の想像力
9 金鍍金(メッキ)時代
 
第三部 南北戦争以後 Postbellum America

10 消費文化――複製,カタログ→消耗から消費へ
11 流行・食・身体美
12 新しい女

第四部 20世紀 Twentieth-Century America

13 移民と階級
14 モダニズムとハーレム・ルネサンス
15 ポップカルチャー
16 冷戦と核とカウンターカルチャー
17 現代セクシュアリティ

第五部 戦争と環境 Intertextual America

18 戦争が作った/壊した「アメリカ」像
19 環境をめぐるアメリカの想像力
 
第六部 環太平洋的ヴィジョン 
  Trans-Pacific America

20 海とアメリカ捕鯨 
21 科学最先端からみるアメリカ
22 日米比較文化考――広島・長崎の語り方

テキスト

巽孝之、宇沢美子編著『よくわかるアメリカ文化史』(ミネルヴァ書房、2020年)

テキストの読み方

各章を読んだらその内容をまとめ、参考文献に挙げられているテクストにも可能な限り目を通すこと。

履修上の注意

基本的な英語文法を習得していることが必要となる。またレポート作成にあたっては、作品や作家についてのリサーチが必要となるため、図書館でのリサーチや、データベースを用いた基礎的な資料調査方法を習得していることが望ましい(不安がある場合にはメディアセンターのウェブサイトにアップされている動画や参考文献で勉強すること)。




 

関連科目

アメリカ文学、アメリカ文学研究Iと併せて履修するのが望ましい。

成績評価方法

レポートの合格を前提として科目試験によって評価する。




 

参考文献

巽孝之『アメリカ文学史――駆動する物語の時空間』(慶應義塾大学出版会、2003年)
平石貴樹『アメリカ文学史』(松柏社、2010年)

佐藤望、湯川武、横山千晶、近藤昭彦 編著『アカデミック・スキルズ(第3版)――大学生のための知的技法入門』
(慶應義塾大学出版会、2020年)
慶應義塾大学日吉キャンパス学習相談員『学生による学生のためのダメレポート脱出法 (アカデミック・スキルズ)』(慶應義塾大学出版会、2014年)

レポート作成上の注意

文学テクストを「アカデミックに論じる」とは、構成・技法・形式上の特質、登場人物の性格描写や人物造形、主題について自らの解釈を提示する際に、学術的なルールに従い先行研究をきちんと踏まえることを意味する。つまり、精読に加えて、これまでの先行研究を踏まえてテクストとコンテクストの両面から持論を展開しなければならない。(先行研究は漫然と引用せず、それを援用するのか、批判するのか、明確な意図を持つこと。また、引用する際は必ずMLA第8版に従い書誌情報を明記すること。)

あらすじ紹介だけのレポート、歴史的な背景を羅列しただけのレポート、パラグラフ・ライティングができていない箇条書きのレポートなども、「論じる」という次元に達していないものとして、全て不合格とする。当科目のレポートを作成するに当たっては、(翻訳がある場合は参考にしても構わないが)原文を丹念に読み、そこに刻み込まれた時代背景について調べ、作者が書いた他のテクストや他の作家との比較なども先行研究を駆使して行い、課題テクストの意義・特徴を具体的な証拠を提示しながら論理的に説明できていなければならない(「学術的レポート」は、自分の人生論や哲学を独白する場ではないことに注意)。

なお、科目試験の準備としては、指定教科書を隅々まで熟読し、アメリカ文化史の大きな流れの中で文学テクストの意義を把握するよう努めて学習すること。