慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
民法総論
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 甲類・乙類 単位 3
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EC002304

講義要綱

 民法は、私達が共に幸福な社会生活を営むために不可欠な、基本ルール(社会規範)の一つです。私達が共に幸福な社会生活を営むためには、自分が望む権利移転の効果をどのように求めるのか。自分の財産をどのように守るのか。私達が利己的になり他人の生命や財産を侵害しないようにするにはどうすればよいのか等々の基本的なルールが必要ですし、それらは社会生活上とても大切なものの一つです。したがって、社会の構成員である皆さん一人一人に、その基本ルールの内容や必要性を学んでいただきたいと思っています。
 また、本講義でとりあげる「民法総論」は、民法典を理解する上での基本原則を内容とする民法総則編を領域としますが、民法典制定以来の大改正といわれる債権法改正が施行されましたので、民法総則編との関係でも、債権法の改正が求められた社会的背景や理由、改正規定等についても学んでいただきたいと考えます。
 第1部 自然人及び法人
 第2部 法律行為
 第3部 代理制度
 第4部 条件及び期限
 第5部 時効制度
 第6部 物
 第7部 民法の通則

テキスト

平野裕之『コア・テキスト民法Ⅰ 民法総則(第2版)』新世社、2017年

テキストの読み方

 本講義で採用する『コア・テキスト民法Ⅰ 民法総則(第2版)』は、筆者が、学説・判例の引用を省き、一般的な民法の入門書より少し深い内容を記述した講義テキストです。各争点について十分な内容で記述されていますので、同テキストの内容をしっかり読み込んでいただき、科目試験等にのぞんでいただきたいと思います。
 なお、前述のように、民法は私達の市民生活の基本ルールであり、しかも私達の生活の最も身近な問題を対象とし、立場や価値観の異なる人々の間に生じる利害の牴触と法的解決をとりあげる、親しみやすくて解りやすい学問領域です。しかし、残念ながら、いざ民法を学ぼうとすると、法律用語や法文書の表現が固苦しく専門的なために、とても難解で取り組みにくいような印象を与えがちですが、同テキストは、具体例や図を多く用いながら、民法の基本体系や各規定内容の相互関係を明確にし、さらに民法改正の論点についても非常に詳しく説明されていますので、繰り返し読んで、私法学習の第一歩を踏み出していただきたいと思います。

履修上の注意

1 法律用語を正確に理解して使えることは重要です。法律用語辞典等を手許において、解らない用語はすぐに調べるようにしましょう。
2 各制度の制度趣旨や他の制度との相違等を考え、整理できることも大切です。新しく学んだことは、常に既に知っていることと、どのように関連するのか、或いは異なるのかを考えるようにしましょう。
3 教科書を読む前に必ず、単元の範囲の一連の条文に目を通して、各規定がどのような事例を想定しているのかのイメージをもってから、教科書を読むようにして下さい。理解が深まります。
4 なお、科目試験は、テキスト全領域から、その内容が理解できているかを問われているものです。指定テキストの記述内容から離れたような自分の思いや感想、経験の記述については、一切、成績評価の対象とはなりませんので、くれぐれも指示通りの作業を終えてから、受験をお願いします。

成績評価方法

科目試験では、指定教科書の内容が理解できているか否かを問います。したがって、各制度の制度趣旨、制度の類型、相違点等を中心として、記述式または事例式問題による筆記試験で評価します。

参考文献

潮見佳男、道垣内弘人編『判例百選民法Ⅰ(第8版)』(別冊ジュリストNo.237)、有斐閣、2018年、定価2,420円(本体2,200円)ISBN978-4-641-11537-8
その他、判例解説の市販書等の利用。

レポート作成上の注意

1 テキストや参考文献、法務省ホームページでの審議録等でそのアウトラインをよく把握してからレポートの作成をはじめて下さい。
2 単なる引き写しではなく、自己の頭で整理して十分に問題点を理解した上で、できるだけ自己の言葉で説明して下さい。
3 読み手の立場に立った気持ちで、丁寧にレポートすることが大事です(レポートは文章です。図版等を利用した箇条書のレジュメではありませんので、章立て、各段落、接続語に意味を持たせて、流れのある内容で書いて下さい)。