慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
新・刑法総論
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 甲類・乙類 単位 3
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EC000804

講義要綱

第1章  犯罪論の基礎



Ⅰ 刑法と刑法学



Ⅱ 犯罪論の体系



第2章  構成要件該当性Ⅰ――基本型



Ⅰ 客観的構成要件要素



Ⅱ 主観的構成要件要素



Ⅲ 未遂


第3章  構成要件該当性Ⅱ――複数人の関与

Ⅰ 正犯と共犯



Ⅱ 間接正犯



Ⅲ 共同正犯



Ⅳ 狭義の共犯



Ⅴ 共犯の処罰根拠と因果性



Ⅵ 共犯の諸問題


第4章  構成要件該当性Ⅲ――不作為犯

Ⅰ 不作為犯の類型



Ⅱ 不作為処罰の限定性



Ⅲ 作為と不作為



Ⅳ 作為と不作為の同価値性



Ⅴ 不作為の因果性


第5章  構成要件該当性Ⅳ――過失犯

Ⅰ 過失犯の構造と要件



Ⅱ 予見可能性



Ⅲ 結果回避義務違反



Ⅳ 過失犯の因果関係



Ⅴ 複数人による過失の競合


第6章  違法性阻却とその周辺

Ⅰ 総説



Ⅱ 正当防衛



Ⅲ 緊急避難



Ⅳ 自救行為



Ⅴ 正当行為



Ⅵ 被害者の同意とその周辺



Ⅶ 実質的違法性阻却


第7章  責任

Ⅰ 責任の意義



Ⅱ 責任能力



Ⅲ 故意と違法性の意識の可能性



Ⅳ 期待可能性


第8章  罪数

Ⅰ 罪数論の全体像



Ⅱ 本来的一罪



Ⅲ 科刑上一罪



Ⅳ 併合罪


第9章  刑罰

Ⅰ 刑罰の種類・内容



Ⅱ 刑罰の適用



Ⅲ 刑の執行の減軽・免除と刑の消滅


第10章    罪刑法定主義と刑法の適用範囲

Ⅰ 罪刑法定主義



Ⅱ 刑法の適用範囲

テキスト

亀井源太郎ほか『刑法Ⅰ総論(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社、2020年

テキストの読み方

刑法総論は体系性の強い学問です。個々の論点が相互に密接に連関しており、教科書の後半部分を読んではじめて、前半部分に書いてあることが十分に理解できるということが起こり得ます。そのため、テキストを読み進める過程でわからない事項があったとしても、立ち止まらずに通読し、その後に、理解できなかった箇所を読み返してください。

判例教材を用いてテキスト中で引用されている判例を確認しながら読み進めると、理解が格段に深まります(判例教材の例は、参考文献欄を参照)。

履修上の注意

刑法総論は犯罪一般の成立要件について論じる学問です。窃盗罪、詐欺罪、放火罪etc.といった個別の犯罪の特徴を捨象した議論が展開されます。刑法総論の学習の難点としては、①議論の抽象度が高いこと、②個別の犯罪の特徴を捨象するといっても、代表的な犯罪の要件についての知識がなければ理解が困難な場面があること、が挙げられます。そのため、刑法総論と並行して刑法各論の学習も進めると効果的です。

関連科目

刑法各論、刑事訴訟法、刑事政策

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

判例教材の例として、以下のものがあります。
・西田典之ほか、判例刑法総論、有斐閣、第7版、2018年(解説は付いていない。収録件数が多く引用が詳細。)
・佐伯仁志=橋爪隆編、刑法判例百選Ⅰ総論、有斐閣、第8版、2020年(学術的レベルの高い解説が付いた定番の判例教材。収録件数は少ない。)
・成瀬幸典=安田拓人編、判例プラクティス刑法Ⅰ総論、信山社、第2版、2020年(簡潔な解説が付いている。収録件数が多い。)

レポート作成上の注意

事例問題を解くにあたっては、まず課題のストーリーを読み、六法をめくりながら、刑法典の条文に該当しそうな事実を抽出しなくてはなりません。これにより、何罪の成否が問題となるかを明らかにします(刑法総論のレポート課題の場合、この作業はあまり難しくはありません)。 次に、その罪の成否との関係でどのような法的論点が生じるのかを示します。課題には、刑法総論上の論点が複数隠れています。続いて、論点ごとに判例・学説を調査してその内容を要約し、それらのうちのどの考え方を支持するかを提示します。その際、当然、論拠を示すことが必要です。最後に、自分の見解を課題の事例にあてはめ、何罪が成立するのかを明らかにします(まったく犯罪が成立しないケースもあるかもしれません)。以上のことを簡単にまとめると以下のようになります。




1のステップ:事実の抽出
2のステップ:問題提起
3のステップ:既存の判例・学説の要約
4のステップ:私見の提示・あてはめ
(以上の作業を論点ごとに行い、最終結論を出す)




なお、レポート作成の際の文章作法については、井田良ほか『法を学ぶ人のための文章作法』(有斐閣、第2版、2019年)や田髙寛貴ほか『リーガル・リサーチ&リポート』(有斐閣、第2版、2019年)が参考になります。