慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
刑事政策学
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EC005903

講義要綱

本科目は、刑事政策における基本的な諸論点について学習するものです。刑事政策の概念や歴史といった理念を学ぶ部分から始まり、刑罰論(総論的部分及び死刑・自由刑・財産刑といった各刑罰について)、犯罪者処遇論(総論的部分と施設内処遇、社会内処遇について)へと進めてもらいます。また、被害者学に関する諸問題についても学びます。最後に、各論的問題として、薬物犯罪・性犯罪・家庭内犯罪・少年犯罪などの個別犯罪についてその対策を学ぶということになります。
本科目は、単に刑事政策に関する制度を覚えるということを目的とはしていません。現代社会に生起するさまざまな犯罪に対する法的対応の検討を通じて、政策論的手法と思考能力を養っていただきたいと考えています。
 指定教科書の構成は次の通りです。
 第1講 刑事政策の概念
 第2講 刑事政策の歴史
 第3講 刑事政策の動向
 第4講 犯罪予防
 第5講 刑事制裁(刑罰と処分)
 第6講 刑事司法・少年司法機関の役割
 第7講 犯罪被害者の支援と法的地位
 第8講 死刑
 第9講 自由刑
 第10講 財産刑
 第11講 保安処分をめぐる問題
 第12講 犯罪者の処遇
 第13講 施設内処遇
 第14講 社会内処遇
 第15講 わが国の犯罪情勢
 第16講 個別犯罪と対策 

 今年のテーマは,来日外国人犯罪に対する刑事法上の対応のあり方についてです。

 

 まず,タイトルの外国人に(来日)と括弧書きで来日という言葉がつけてあるのは,近年,日本に就労等のため来日した外国人のうち在留資格の一つである「永住」資格を取る者が非常に増えており,こうした永住資格をとった「来日」外国人は,犯罪統計上,来日外国人から外れるため,実態としては来日型であるのに,統計上は来日とされないためです。しかし,永住資格をとったとしても,一定の犯罪を行うか一定の刑罰を受ければ日本から退去強制となる点は,他の在留資格の外国人と全く同じです。

 

 レポートの本質的な問題は,来日型の外国人で犯罪を行った者に対する刑罰の執行や処遇をどこで行い,どこに(どこの国に)社会復帰させるかということです。そのことを論じるためには,外国人に対する出入国管理の制度がどうなっているか,来日型の外国人に対する訴追や刑事裁判の状況はどうか,刑事施設における処遇はどのようなものが行われているか,そして釈放後はどうなるのかをきちんと調べる必要があります。また,受刑中の国際受刑者移送についても検討が必要です。

テキスト

守山正・安部哲夫編著『ビギナーズ刑事政策〔第3版〕』成文堂、2017年

テキストの読み方

テキストは、勉強の出発点に過ぎません。テキストの該当箇所を読んだ後、テキストにある参考文献を読み、さらにそこに掲載されている参考文献を探すといった具合に文献の幅を広げていって下さい。

履修上の注意

刑事政策は、刑法、刑事訴訟法など刑事法の知識が前提となる学問領域です。したがってこれら関連分野への基本的知識を有していることが望ましいです。

関連科目

刑事政策を学ぶにあたっては、刑法、刑事訴訟法の知識が必要となります。したがって、法学部専門科目では、刑法総論、刑法各論、刑事訴訟法などを併せて履修することが望ましいでしょう。

成績評価方法

科目試験を行います。もし,コロナ情勢によって科目試験が実施されない場合、大学の方針に従って成績評価を行います。

参考文献

法務総合研究所『令和3年版犯罪被害者白書』(2021
(https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00027.html


出入国在留管理庁『2020年版(入管白書)出入国在留管理』(2021)  
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00002.html




 

レポート作成上の注意

テキストや参考文献の内容をまとめるだけではなく、そこにどのような問題があり、それに対してあなたがどのように考えるのかを参考文献を根拠として引用し、論じることが重要です。また、あなたと異なる見解がある場合には、その見解を無視して論じてはいけません。あなたがなぜその見解をとらないのかということも含めて論じる必要があります。
その他レポート作成上の一般的な注意事項は、塾生ガイドにしっかりと従ってください。不正行為や論文の盗用があった場合には、成績評価がつかないだけでなく処分の対象となりますので、くれぐれも注意してください。