慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
現代中国論
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EC008802

講義要綱

「台頭する中国」への関心が日本のみならず国際社会で高まっている。それは、一つには過去四半世紀以上にわたって、中国が急速な経済成長を実現し、「世界の工場」、「世界の市場」として世界経済を牽引する力と認識されてきたからである。いま一つには、その経済力を背景に国際政治における発言力が高まり、「大国」として認知されてきたからでもある。しかし、「台頭」だけが中国の真の姿ではない。一方において中国は多くの深刻な問題に直面しており、「台頭」とは異なる側面にも留意しなければならない。
 こうした多面性を持つ中国の現状を理解する上で不可欠であるのが、歴史的背景への理解である。すなわち、現在、中国が直面する問題を理解するためには、その歴史的背景に踏み込む必要がある。そうすることによって、中国の政治・外交の今後の展望を知る手がかりを得られるはずである。こような問題意識に基づき、本講義では、「歴史的連続性」の視点を踏まえて、中国の政治・外交に関連した問題を扱う。本講義の中心は1949年以降の中華人民共和国期であるが、無論、それ以前の中華民国期への理解も必要とされる。こうして、現代中国に生起したさまざまな事象の中から、中国の政治・外交の全体像を理解する上で有意義な個別のテーマを選び、学習を進めてゆく。
 中国は日本と地理的にも文化的にも近接した存在であるがゆえに、理解が比較的容易であると思われがちである。しかし、いったん学習を始めるとその奥深さと複雑さに困惑するに違いないが、それこそが中国研究の醍醐味と言えよう。

テキスト

毛里和子『現代中国政治〔第3版〕─グローバル・パワーの肖像』名古屋大学出版会、2012年

テキストの読み方

本レポート課題に取り組むためには、当然のことながら、近年の中国政治・外交に関する理解だけでは不十分である。現在、中国において生起している様々な事象の背景を理解するためには、少なくとも、中華人民共和国建国以降の中国政治全体に関する理解が必要である。そのために課題提出者は、まず中華人民共和国の政治・外交を通史的に理解しなければならない。テキストに書かれている内容を批判的に検証しながら、自分自身の力で中華人民共和国史を整理し直す作業を踏まえて、本レポート課題に取り組んで欲しい。なお、指定テキストの構成は、以下の通りである。

序 章 現代中国への新たなアプローチ
第1章 毛沢東時代の政治プロセスと毛型リーダーシップ
第2章 鄧小平時代の政治プロセスー脱社会主義の道
第3章 ポスト鄧小平時代の政治プロセスー資本主義への道
第4章 国家の制度とその機能
第5章 党・国家・軍三位一体のなかの共産党
第6章 政治的軍隊―人民解放軍
第7章 党と国家の政策形成のメカニズム
第8章 大変身する共産党―エリートの党へ
第9章 陳情の政治学―圧力型政治体系論から
第10章 比較のなかの中国政治
終 章 「中国モデル」をめぐって

履修上の注意

平素より、中国の動向に関心を持ち、中国に関する報道や情報に注意を傾け、一定の基礎的な理解があることが望ましい。

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

安田淳他編『台湾をめぐる安全保障』慶應義塾大学出版会、2016年
高橋伸夫編著『現代中国政治研究ハンドブック』慶應義塾大学出版会、2015年
西村成雄・小此木政夫『現代東アジアの政治と社会』放送大学教育振興会、2010年
国分良成編著『現代東アジア─朝鮮半島・中国・台湾・モンゴル─』慶應義塾大学出版会、2009年
西村成雄・国分良成『党と国家─政治体制の軌跡─』岩波書店、2009年
山田辰雄『中国近代政治史』放送大学教育振興会、2007年
阿部純一他編『中国をめぐる安全保障』ミネルヴァ書房、2007年
国分良成編『中国の統治能力』慶應義塾大学出版会、2006年
家近亮子ほか編『5分野から読み解く現代中国』晃洋書房、2005年
国分良成編『中国政治と東アジア』慶應義塾大学出版会、2004年
天児慧『中国の歴史11 巨龍の胎動』講談社、2004年
天児慧『中華人民共和国史』岩波新書、1999年
小島朋之『中国現代史』中公新書、1999年

レポート作成上の注意

レポート課題に関しては、上記の参考文献以外にも、数多くの書籍と論文がある。レポート提出者は、それらをできるだけ系統的かつ批判的に読みこなすことが要求される。なお、言うまでもないが、課題に関する書籍や論文を単純に丸写ししたり、或いは部分的に切り取ったりしたものを要約しただけでは、合格点には達しない。レポート提出者自身が本課題に真摯に取り組み、たとえ未熟ではあっても、自らの言葉で記述することが要求される点に留意されたい。

*レポート作成にあたり、他者の著作物(インターネット上の文章も含む)を参照したり引用した場合は、文中の該当箇所に必ず注を付けて、出典を明記しなければならない(文末に参考文献を列挙するだけでは不可)。さもなければ、「採点不能」あるいは「不合格」となる恐れがあるので注意されたい。