慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
学校カリキュラム論
科目設置 教職科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 教職 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0F0003203

講義要綱

〔授業の到達目標及びテーマ〕
 学習指導要領をもとに各学校・各教室において教師がその専門性を発揮しながらカリキュラムをデザインしていくための諸概念や方法を歴史的・現代的に学び、さらにはカリキュラム・マネジメントを行うための枠組みも理解する。
〔授業の概要〕
 まずはカリキュラム改革の歴史を内外に学びながら、日本において学習指導要領などが果たしてきた教育課程編成の諸機能を概説するとともに、カリキュラム編成のための基本的な枠組みを多角的に解説する。ついで、教科の再編や教科間の横断、発達に応じたカリキュラムの縦断的編成、さらには総合的な学習の時間や特別活動など教科学習と有機的な関連を持たせようとするカリキュラムなどを多様に紹介し、その知見を共有する。「計画としてのカリキュラム」と「実施・経験されたカリキュラム」へとその見方を拡張させ、子どもの学びへの着目と教師の専門的な学びに関する新たなカリキュラム論を検討しながら、カリキュラム・マネジメントや教師たちによる授業研究実践の試みにその意義を見出していく。
 テキストは以下の構成になっている。
第1章 教育課程とは
 1 教育課程(カリキュラム)とは何か
 2 教育課程編成をめぐる論点
 3 学習指導要領の基本構造
 4 教育課程と社会システム
第2章 教科の教育課程
 1 国が計画する教育課程
 2 教師が設計する教育課程
 3 児童と教科のカリキュラム
第3章 総合学習の教育課程
 1 戦後初期総合学習の登場と教育課程改造(1950年代)
 2 教育課程に総合学習は必要か(1970年代)
 3 総合学習で育まれる「学力」とは(1990年代)
 4 教育課程における総合学習の役割
第4章 特別活動の教育課程
 1 学校教育における特別活動の位置づけ
 2 自主性を育む学校行事のあり方
 3 これからの特別活動の展望
第5章 戦後の教育課程の変遷
 1 学力問題と学習指導要領の変遷
 2 経験主義の教育課程の特徴と論点
 3 教科主義(系統主義)の教育課程の特徴と論点
 4 ゆとり教育政策の特徴と批判
 5 PISA問題と資質・能力の重視へ
第6章 2008年以降の教育課程の枠組み
 1 2008年の学習指導要領改訂
 2 2015年の学習指導要領一部修正
 3 2017年の学習指導要領改訂
 4 小学校の教育課程の実践例
第7章 資質・能力の育成と教育課程
 1 戦後日本における学力論の展開
 2 諸外国における資質・能力論
 3 日本における資質・能力論と教育課程
 4 質の高い学びをもたらす教育課程実践
第8章 主権者を育てる教育課程
 1 主権者を育てる教育とは何か
 2 学習指導要領における主権者教育
 3 指導事例の検討
 4 主権者教育を進める際の留意点
 5 充実した実践に向けて
第9章 言語能力を育む教育課程
 1 PISAショック以降の言語に関する提言の動向
 2 2017年改訂学習指導要領における言語に関する提言
 3 思考と言語の関係──言語が果たす役割
 4 経験と言語の関係──言語が果たせない役割
 5 教育課程全体で言語能力を育てる
第10章 教育評価とは何か──学力評価を中心に
 1 教育評価の目的
 2 教育評価の立場の違い
 3 「目標に準拠した評価」の充実に向けた動き
 4 指導要録のもとでの学力評価の工夫
 5 学力評価をめぐる論点
第11章 資質・能力の形成を支える評価
 1 「真正の評価」論への注目
 2 パフォーマンス評価
 3 ポートフォリオ評価
 4 実践上の課題
第12章 カリキュラム評価と学校評価
 1 カリキュラム評価とは何か
 2 カリキュラム評価のアプローチ
 3 学校評価とは何か
 4 京都市立高倉小学校におけるカリキュラム評価と学校評価
第13章 カリキュラム・マネジメント
 1 学習指導要領におけるカリキュラム・マネジメント
 2 マネジメントの主体──教職員は何をすべきか
 3 カリキュラム・マネジメントの実践に向けて
第14章 学校種間の接続と入試
 1 学校種間の接続に関わる諸問題
 2 入試に関わる諸問題
 3 接続の現代的課題と大学入試改革
 4 国際バカロレア

テキスト

細尾萌子・田中耕治(編著)(2018)『教育課程・教育評価(新しい教職教育講座 教職教育編〈6〉)』ミネルヴァ書房

テキストの読み方

学習指導要領を中心とした学校におけるカリキュラム編成のための基礎概念のみならず、背景にあるカリキュラム研究の知見をたえず意識しながら読むことが望まれる。また、テキストの内容は正確におさえながら、教育課程改革がすすむ現在の動向ともたえず連動させた視点をもって読み進めることにも努めてほしい。

履修上の注意

教職課程専門科目である。

成績評価方法

レポートの合格を前提として科目修得試験によって評価する。

参考文献

・現行及び次期学習指導要領とその解説(とりわけ総則)
・各種審議会や教育委員会のとりまとめた報告書等
・教育雑誌での学習指導要領関連の特集論文
・田中耕治編著(2016)『グローバル化時代の教育評価改革─日本・アジア・欧米を結ぶ』日本標準
・鹿毛雅治・藤本和久編著(2017)『「授業研究」を創る─教師が学びあう学校を実現するために』教育出版
・金馬国晴編著(2019)『カリキュラム・マネジメントと教育課程』学文社

レポート作成上の注意

テキストは複数の著者で構成されているので、テキストの部分をつなぎ合わせるようなレポートでは論旨やキーワードの使い方が一貫しない可能性がある。自分の言葉で、自分なりの論旨を組み立てて作成することが望ましい。