慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
社会科・地理歴史科教育法特論Ⅱ
科目設置 教職科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 教職 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0F0002902

講義要綱

社会科教育はその成立した当初から、初等教育(小学校)と中等教育(中学校及び高等学校)の間で教育方法や取り扱う内容などに関して異なった考え方が存在していた。これは当時の文部省にあって担当した調査官の相違などによるところも大きい。しかしながら、小学校から高校までの教育で児童・生徒に社会をどう認識させるかといった共通した理解の下に、社会科ではどういった内容をいかに学ばせるかを検討してきた歴史がある。ところが平成元年版の学習指導要領改訂からは、小学校低学年(一年・二年)では生活に変更され、高等学校では地理歴史科と公民科に解体されることとなったのである。
 本科目「社会科・地理歴史科教育特論Ⅱ」では、地理歴史科という解体された対象である地理と歴史に焦点をあて、特に歴史教育について検討してもらいたい。それは現在でも政治問題となるのが常に歴史教育に関することであるようにもっとも社会から注目されるものであるからである。
 もちろん地理歴史科という教科はその関係性を重視して教育することが求められており、すなわち空間的把握の地理と時系列的把握の歴史の連関する視点から社会認識を深めようとしているものである。
 本科目指定のテキストと参考書を参照するときには、こういった観点を意識して学んでもらいたい。

テキスト

加藤西郷・吉岡真佐樹編著『社会・地歴・公民科教育論』高菅出版、2002年
文部科学省『中学校学習指導要領解説 社会編』。
文部科学省『高等学校学習指導要領解説 地理歴史編』。
※『学習指導要領解説』は、廉価で市販されているが、文部科学省ホームページからダウンロードもできる。

テキストの読み方

本テキストでは、序章から第4章までと終章を学んでもらいたい。特に第1章の第1節と第2節は、よく学んでほしい(第3節は公民分野のため学ばなくても可)。第2章は、学習指導案作成の参考として活用してほしい。121頁~123頁は学習指導案の一つの事例である。

履修上の注意

指定テキストのみならず、参考文献として挙げているものについては目を通してほしい。

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

歴史教育に関して問題意識を深めるためには、家永三郎の著作を読んでほしい。『一歴史学者の歩み』は比較的手に入れやすいので必読である。
・家永三郎『一歴史学者の歩み』岩波現代文庫、2003年。
・家永三郎『家永三郎集』第1巻~第16巻、岩波書店、1997年~1999年。
 また、学習指導要領は学校教育における国の教育内容の基準であるので必ず目を通しておくこと。学習指導要領解説とは文部科学省が法規の一種である学習指導要領の内容を理解してもらうために項目ごとに解説したものであり運用するときの参考となるものである。

レポート作成上の注意

1について:社会科教育としての歴史教育とは、どのようなものだろうか。家永三郎は参考文献に挙げた著作以外に『検定不合格日本史』(三一書房)を出版(絶版)した。これは、教科書検定で不合格になった教科書を一般出版物として刊行したものであるが、元々教科書であるため、そこには学び方などが記載されている。こうしたものも参考として家永三郎の考え方を整理するとよい。また、レポート記載に当たっては、現在の歴史教育に関する政治家の発言なども取り入れながらあなたの考えをまとめてもらいたい。歴史観については、どのような立場(価値観)であってもそれを評価の観点にしないので自由に記載してもらいたい。
2について:学習指導案作成に関しては、指定テキストの中にあるものを参考として工夫してほしい(テキストの第2章参照)。インターネットで調べると教育委員会などで作成したものも見られるのでいろいろな書き方があることも学べるだろう。
 今回のレポートについては、学習指導要領の指定の内容の部分は教科書で見ると多様な問題を分けて記述しているのがわかると思う。どういったテーマでもかまわないが、世界と日本といった観点と現代史としての授業は守ること。また授業については、資料として写真その他を使用するほか、博物館見学や施設見学を含めた授業構成でもかまわない。