慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
シェイクスピア研究
担当教員名
井出 新
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 秋期メディア授業
科目種別・類 第3類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード M2214

授業科目の概要

読み書きのルネサンス的技法を身につける ──16世紀の様々なテクストを題材に──

概要と目的
この講義の目的は、(1)ルネサンス期の英語テクストを読む時に必要な技法がどういうものであるかを歴史的文脈に留意しながら概観し、(2)様々なマニュスクリプトや印刷本の歴史史料や文献の質感を確認しながら、(3)我々に馴染みのない書体で書かれたテクスト、或いは図像が用いられているテクストを読みこなす技法を身につけることである。特にルネサンス期のブラック・レター、セクレタリー・ハンド、宗教的図像などの解読技法を習得するために、当時の印刷本、土地契約書、遺書、時祷書などを用いて講義を進めて行く。画像をできるだけ多く使って受講生の想像力を補いながら授業を進めたい。

到達目標
(1) 多種多様なジャンルの文学作品を英語で読解する力を身につける。
(2) 複数の作品を主題や構造といった文学的観点から比較分析し、作品の特性を実証主義的に考察する力を身につける。
(3) 編集されていない16世紀の英語文献を読んでみようという気持ちになる程度のリテラシーを身につける。

著作権上の問題について
講義ファイルを受講者が無断で配付や公開することはできません。

授業科目の内容

第1回講義内容
イントロダクション 授業の概要・目的・到達目標・課題提出の内容と評価方法、質問などの受付方法

第2回講義内容
シェイクスピアを知る(1)「シェイクスピアとライバルたちの青春」 シェイクスピアと友人劇作家に関する講義を聴いた後、それを参考にしつつ、ジョン・マッデン監督『恋に落ちたシェイクスピア』の映画評①を提出)

第3回講義内容
シェイクスピアを知る(2)「シェイクスピアと家族」 シェイクスピアと家族に関する講義を聞いた後、それを参考にしつつ、ケネス・ブラナー監督『シェイクスピアの庭』の映画評②を提出)

第4回講義内容
マニュスクリプトから印刷本へ──『ハムレット』を中心に 『ハムレット』を通して、劇作家が書く原稿がどのように回覧され、印刷本になっていくかを追い、印刷本が提起する様々な謎を考える。 ・課題提出①

第5回講義内容
書物は語る──ベン・ジョンソンの野望と読者の痕跡 ベン・ジョンソンに注目しながら『作品全集』が何を語るか、また印刷本が当時の読者の読書行為をどのように語るかに耳を傾け、読み書きの技法の実践へと入っていく。 ・課題提出②と③

第6回講義内容
ブロードサイド・バラッドとイギリス・ジャーナリズムの誕生──ブラック・レターの活字書体を読む イギリスのジャーナリズムを原点にまでさかのぼり、それがメディアや小説の誕生に与えた大きな影響を踏まえつつ、ブロードサイド・バラッドのブラック・レターを読む。

第7回講義内容
ブラック・レターの活字書体に馴れる 引き続きブロードサイド・バラッドのブラック・レターを読む。 ・課題提出④

第8回講義内容
イタリアンハンドで書く──ゲイブリエル・ハーヴェイの書簡作法 当時の社会で書簡が果たしていた役割を、ハーヴェイという人物の書簡作法を通して概観しつつ、イタリアンハンドという書体で書いてみる。 ・課題提出⑤

第9回講義内容
セクレタリー・ハンドを読む(その1・教科書) ジョン・ド・ボーシェンが1570年に出版した習字教科書 (A Booke Containing Divers Sortes of Hands)を使って、セクレタリーハンドのABCを学ぶ。

第10回講義内容
セクレタリー・ハンドを読む(その2・契約書) 1614年West Yorkshireで取り交わされたウェイクフィールドの土地使用に関する覚え書きを使って、セクレタリーハンドを読む。 ・課題提出⑥

第11回講義内容
セクレタリー・ハンドを読む(その3・枢密院会議録) 前回課題の解説。そして劇作家クリストファー・マーロウの修士号取り消し撤回に関する枢密院の決定を伝える会議録を使って、さらにセクレタリーハンドを読む。 ・課題提出⑦

第12回講義内容
レター・ロッキングの技術 前回課題の解説 イングランドの諜報活動とクリストファー・マーロウの活動について見ながら、手紙の折りたたみ方の技術について学ぶ。

第13回講義内容
挿絵を読み解く(1)──演劇テクストと挿絵の文化 「読み書きのルネサンス的技法」についての講義で、テクストと同様、挿絵や装飾ボーダーのようなパラテクストの読み方を無視することはできない、今回からルネサンスの印刷本に見られる挿絵というパラテクストの読み方を紹介し、特に演劇テクスト(今回)と宗教テクスト=祈禱書(次回以降)に注目する。

第14回講義内容
挿絵を読み解く(2)──祈禱書・時禱書の予型論的欄外装飾 1578年に出版された『キリスト者の祈禱書』に施された欄外装飾に注目して、その図版の理解の仕方、それがどのような絵を下敷きにしているのかを見ていく。  ・課題提出⑧

第15回講義内容
挿絵を読み解く(3)──挿絵と(自己)検閲 『キリスト者の祈禱書』の1569年版と1578年版を比べながら、挿絵が(自己)検閲の対象になっていたかどうかを見ながら、研究の落とし穴を見極める。また、祈禱書に残された書き込みから、どういう読者がどのよう祈禱書を読んだか、使ったかを考えてもらう。 ・課題提出⑨

成績評価方法

2回のレポート(映画評)提出(20点満点)と9回の課題提出(80点満点)で評価する。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

オンライン授業システム内で配布する

参考文献

オンライン授業システム内で配布する

受講上の要望、または受講上の前提条件

講義の性質上、様々な動画や資料を見てもらうことになるので、PCの使用環境を整えておく必要がある。また、最初の二回の講義では、シェイクスピアに関する映画作品を受講生に鑑賞してもらい、授業を進めていく。著作権法上、映画をオンラインでシェアすることができないので、受講生は各自、映像ストリーミング配給会社(例えばネットフィリックスやアマゾンプライム、グーグルなど)やビデオレンタルショップなどを使って、指定された映画を見てもらうことになる。講義は、受講生に課す課題に応じて短いものと長いものとが取り混ぜられており、そのため全15回の講義となっている。

課題(レポート・小テスト)

2回のレポート(映画評)と9回の課題提出が求められる。