慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学
担当教員名
戸澤 幸作
科目設置 総合教育科目 授業形態 夜間スクーリング
科目種別・類 3分野科目/人文科学分野 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード 12202
開講期間 10月3日(月)~12月26日(月) 曜日・時間等 月曜日、18:20~20:05

授業科目の内容

 この講義では、前後半に分かれて異なる二つの哲学的な問題を紹介し検討します。
 前半の岡嶋パートでは、20世紀前半のフランスを代表する哲学者アンリ・ベルクソンの最初の著作『意識に直接与えられたものについての試論』を講読する形式で、「自由」の問題について考えます。まず、自由の問題について考察するために必要な、意識的な状態がもつ質感や、その量的表現、意識的な時間とその数的表現など、主張な論点を検討します。その上で、自由にかかわる哲学上のトピックである、偶然性や予見可能性、因果性といった諸問題に取り組みます。
 講義後半の戸澤のパートでは、一般にフランス現代思想と呼ばれる動向に位置づけられる20世紀後半のフランスにおける三人の哲学者を取り上げ、彼らのいくつかのテクストを手がかりに、芸術と哲学の出会いをテーマに講義を行います。従って、このパートでは、広い意味での美学を扱います。しかし、それは芸術作品にまつわる諸々の哲学的考察としての美学ではありません。このパートで扱う哲学者の一人ジル・ドゥルーズは、映像化された対談『アベセデール』において、自らの文化との関わりについて語っています。彼が諸々の芸術に魅せられているのは、知識を得るためでも歴史的な証言に触れるためでもなく、むしろ、芸術はひとつの出会いであり、ひとつの出会いを呼び起こすものであって、哲学の只中で哲学者を哲学から出てゆくように励ますものだからだと言っています。出会いによって運び去られること、あるいは出会いそれ自身のうちに運び去られること、そうして自らの外なるひとつのヴィジョンを手にすることが、芸術と哲学の出会いにおいて賭けられているものなのではないか。このような視点から、限られた講義回ではありますが、ジャン=フランソワ・リオタール、ミシェル・フーコー、そしてジル・ドゥルーズという三人の哲学者を通じて、このような芸術における「出会い」について皆さんと考えてみたいと考えています。

第1回講義内容
イントロダクション・人物紹介(岡嶋)

第2回講義内容
意識の質と量(岡嶋)

第3回講義内容
意識的時間①(岡嶋)

第4回講義内容
意識的時間②(岡嶋)

第5回講義内容
自由意志と決定論①(岡嶋)

第6回講義内容
自由意志と決定論②(岡嶋)

第7回講義内容
講義後半イントロダクション 芸術と哲学の出会い ジル・ドゥルーズの『アベセデール』に寄せて(戸澤)

第8回講義内容
ジャン=フランソワ・リオタールとポストモダンの美学(戸澤)

第9回講義内容
ミシェル・フーコーと芸術作品としての生⑴(戸澤)

第10回講義内容
ミシェル・フーコーと芸術作品としての生⑵(戸澤)

第11回講義内容
ジル・ドゥルーズと映画的ヴィジョン⑴(戸澤)

第12回講義内容
ジル・ドゥルーズと映画的ヴィジョン⑵(戸澤)

その他の学習内容
  ・毎回の授業後に簡単なフィードバック・コメントを書いてもらいます(成績評価には含みません)。

成績評価方法

全授業終了後に設けられる期日までに提出されるレポートによって評価します。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

指定しない。

参考文献

意識に直接与えられたものについての試論/アンリ・ベルクソン ちくま学芸文庫 2002
非人間的なもの―時間についての講話/ジャン=フランソワ・リオタール 法政大学出版局 2002
シネマ1 運動イメージ/ジル・ドゥルーズ 法政大学出版 2008
シネマ2 時間イメージ/ジル・ドゥルーズ 法政大学出版 2006
記号と事件/ジル・ドゥルーズ 河出書房新社 2007

受講上の要望、または受講上の前提条件

本講義は、新型コロナウイルス感染症の感染状況によって、(岡嶋と戸澤の共担ではなく)戸澤の単独講義となる可能性があります。その場合には、現状では講義後半で扱う内容をより拡張する形の講義を行う予定です。