慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
文学A
担当教員名
植松 公彦
科目設置 総合教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 3分野科目/人文科学分野 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード 12217
開講期間 I期 8/8~8/13 曜日・時間等 1~2限 9:00~12:45

授業科目の内容

 唐李瀚撰の『蒙求』は中国古代の著名人の伝記・逸話を集めた、当時の児童向けの啓蒙書で、平安時代にはすでに日本に伝わり、漢文初学者向けの教科書として広く長く用いられて、日本人の中国古代に対する知識・教養の源泉の一つになりました。
 『蒙求』という書名は『易経』の「我より童蒙に求むるにあらず、童蒙我に求む」(人の道は先生が生徒に押し付けるものではなく、生徒が先生に教えを請うものである)に基づいていますが、その内容は多種多様で、娯楽的な要素を兼ね備えています。
 『蒙求』は伝来当初は貴族に珍重され、中世以降は僧侶や武士にも普及し、近世になると庶民にも流行して、国文学に多くの題材を提供しました。明治時代には夏目漱石も愛読し、彼の筆名の「漱石」は『蒙求』によったことがよく知られています。
 本講義では皆さんと一緒に『蒙求』の何篇かを読んで、漢文の歴史・文法・語彙などを学び、『蒙求』の内容を味わい、その背景にある中国の伝統的な物事の見方について考えて、皆さんが今後も漢文を読んでいくための基礎を養います。
 また漢文は一見私たちの日常生活からは遠い存在のようですが、漢文が日本語の形成と運用にとって今なお欠くことのできないものであることは言うまでもなく、漢文を読むことは日本語を学ぶことでもあると言っても過言ではないでしょう。

第1回講義内容
「江革巨孝」を読む

第2回講義内容
「江革巨孝」を読む 「王覧友弟」を読む

第3回講義内容
「王覧友弟」を読む

第4回講義内容
「王覧友弟」を読む 「蕭何定律」を読む

第5回講義内容
「蕭何定律」を読む

第6回講義内容
「蕭何定律」を読む 「叔孫制礼」を読む

第7回講義内容
「叔孫制礼」を読む

第8回講義内容
「叔孫制礼」を読む 「葛豊刺挙」を読む

第9回講義内容
「葛豊刺挙」を読む

第10回講義内容
「息躬歴詆」を読む

第11回講義内容
「息躬歴詆」を読む 試験について

第12回講義内容
試験・総括

その他の学習内容
  ・なし。

成績評価方法

第12回に実施する試験の点数による。出題範囲・方法等は講義中事前に指示する。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

漢文の素養:誰が日本文化をつくったのか?/加藤徹 光文社新書 2006
漢文と東アジア:訓読の文化圏/金文京 岩波新書 2010
漢文脈と近代日本/齋藤希史 角川ソフィア文庫 2014

受講上の要望、または受講上の前提条件

中学・高校で取り上げるような漢文は学習したことがあるのを前提に講義を進める。毎回講義後はその内容を復習すること(90分程度)。漢和辞典(電子辞書を含む)はなくても受講できるが、あれば理解の助けになる。