慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
人類学
担当教員名
河野 礼子
科目設置 総合教育科目 授業形態 秋期週末スクーリング
科目種別・類 3分野科目/自然科学分野 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード 12238
開講期間 2022年10月15日~10月30日 曜日・時間等 第1週10/15・16、第2週10/22・23、第3週10/29・30、土曜日13:30~17:15、日曜日9:00~12:45

授業科目の内容

本講義では、人類進化全般について総合的な理解を目指す。まず前半は進化という現象そのものの理解や、進化の過程を研究する方法、いかにして骨や歯から必要な情報を引き出すか、さらにヒトの生物としての位置付け、特に霊長類の中でみたヒトの普遍性と独自性など、人類進化を学ぶ上で必要となる基礎的な知識を習得する。後半は実際の人類進化の過程を5回に分けてみていく。まず人類以前の段階を概観し、次に初めの人類である猿人について学ぶ。続いて我々自身の含まれるホモ属の人類について、全体像を理解したのち、我々ホモ・サピエンスの進化について見ていく。最後に日本列島におけるヒトの変遷とその研究の過程について学ぶ。実際の進化過程については主に骨や歯の形態学的な面に着目し、これまでにどのようなことが明らかになってきたかを解説するが、人類進化史解明にかかわる関連諸分野の知見も合わせて紹介していく。

第1回講義内容
「生物の一員としてのヒト:分類と進化」について講義する。 人間も多様な生物世界の一員であり、基本的には特別な存在ではない。生物としてのヒトの位置付けを、分類の基礎的な仕組みとともに理解し、ヒトに限らず生物について学ぶ上で欠くことのできない、進化に関する理解を身につける。生物の進化は物理法則などによって完全に説明できるものではないが、ある程度のルール・原理にもとづいたものである。これらの原理や一般的な進化の仕組みについて学習する。

第2回講義内容
「実際の進化過程を明らかにする方法」について講義する。 ルールや原理とは別に、実際の進化の過程は言わば「歴史」であり、偶然の要素による部分も大きい。したがって、実際に起こった進化過程を明らかにするためには、過去をさぐる多様なアプローチが必要である。各種アプローチについて具体例をあげながら学習する。

第3回講義内容
「歯や骨からわかること:機能と形態」について講義する。 生物進化の歴史をたどる際に、もっとも重要な材料となるのが、その生物の歯や骨などの遺残物である。人類進化研究においても、数百万年におよぶ進化史も、日本人の数千年の道のりも、いずれも主として歯や骨の研究を通じて理解されてきた。歯や骨からどのように進化の歴史を解明していくのかを二回にわたって学ぶ。まずは主に骨や歯の形と機能の関係に着目する。

第4回講義内容
「歯や骨からわかること:生活史と小進化」について講義する。 人骨資料を対象とした研究方法について学習する。個体のアイデンティティーや暮らしぶりから、集団としての特徴、移動の歴史まで、様々な情報がどのように得られるのかを学ぶ。

第5回講義内容
「霊長類の一員としてのヒト」について講義する。 ヒトは霊長類の一員である。ヒトはこの霊長類というグループの一般的な特徴と、このグループ内でも特異なヒト特有の特徴とを併せ持っている。ヒトの進化の歴史を学ぶための基礎として、霊長類としての特徴・ヒトの独自性について学ぶ。さらに類人猿と比較した場合の、ヒトの形態的な特徴とその意義を理解する。

第6回講義内容
「現生霊長類に学ぶこと」について講義する。 現生の霊長類、特に現生大型類人猿の社会性や行動・生態などを調査する比較行動学的研究が、ヒトの進化研究のモデルケースとしてなぜ重要なのかを理解し、実際の研究の現状をみる。

第7回講義内容
「人類の進化:霊長類の進化とヒト科の出現まで」について講義する。 以降5回にわたってヒトの進化史をたどる。まずは霊長類出現以降の霊長類の進化史を概観し、ヒト科出現前夜までを追う。

第8回講義内容
「人類の進化:猿人」について講義する。 ヒト科の最初の生き物である猿人について、これまでにわかってきたことを学ぶ。彼らをヒトとする根拠となる形態特徴等について理解する。

第9回講義内容
「人類の進化:ホモ属の誕生と発展」について講義する。 出アフリカをはじめて果たしたホモ属の人類について、猿人との身体的違いを理解し、その出現の背景と発展の様相を学ぶ。

第10回講義内容
「人類の進化:ホモ・サピエンスの起源と拡散」について講義する。 全世界中へ居住域を広げて今日へとつながるホモ・サピエンスの進化史を学ぶ。現在の世界各地に見られる地域集団の特徴とその形成の意義を探る。

第11回講義内容
「人類の進化:日本列島のヒトの進化」について講義する。 日本人の起源と現在の日本人集団へ至る道のりについて、これまでに明らかになってきたことを、関連するさまざまな具体的研究例の紹介をまじえて概観する。

第12回講義内容
試験・総括

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

試験を実施する。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦/井原・梅崎・米田編 東京大学出版会 2021
シリーズ進化学⑤ ヒトの進化/石川他編、斉藤・諏訪・颯田・山森・長谷川・岡ノ谷著 岩波書店 2006
人間史をたどる ―自然人類学入門―/片山・五百部・中橋・斉藤・土肥著 朝倉書店 1996
楽しい調べ学習シリーズ 人類の進化大研究 700万年の歴史がわかる/河野礼子監修 PHP研究所 2015

プリントを適宜配布する

受講上の要望、または受講上の前提条件

配付資料や参考文献等の情報を必要に応じて予習する。
体を構成する主な骨の名称を事前に学習しておくことを推奨する。